フィンランド人の若者が、失恋をきっかけに、自分の持ちモノすべてをリセットして行なった365日の“ 実験”生活。監督・脚本・主演を務めたペトリ・ルーッカイネンの実体験から生まれた「とにかくやってみよう!」のアイディアが、映画という形になった。登場する家族や友人は全てホンモノ、ペトリを中心とするリアルな人間関係と日常生活に起こるドラマが、北欧ジャズシーンをリードするティモ・ラッシーのサックスに乗って、軽快に綴られていく。2013年のフィンランド公開時には、多数の“実験”フォロワーが生まれ、若者の間で一大ムーブメントとなった。
ペトリは、毎日「自分にとって必要なモノ」を考えながら、倉庫から1つずつモノを選んでいく。自分のモノを一旦預けて、その中から選んでいくという行為は、過去の自分を否定せず、未来の自分につなげていくこと。その中で生まれてくる「幸せになるために、人生で大切なものは何か?」という問いが、自然と観る者に投げ掛けられ、ふとモノと自分の関係性を考えてみたくなる。この映画は、観るだけでは終わらず、“自分ごと”としていくことに醍醐味がある。
「ムーミン」やサンタクロースの国として知られているフィンランドは、常に幸福度ランキングの上位で、世界有数のシンプルライフの国。自分でモノを作るD I Yやリペア・リユース・リサイクルは当たり前だ。2年前に始まった人気イベント「クリーニングデイ」のような、モノ・ヒト・コトを効率的に楽しく循環させる場など、サステナブルなシステムをデザインするのが上手い。フィンランド人はよく森に出かけ、夏はモノがないサマーハウス(これも自分で作る)でゆったりと過ごし、自分自身を取り戻すことを大事にしている。本作から垣間みることができるフィンランドのシンプルなライフスタイルには、私たちの暮らしを豊かにするヒントがある。
1日目は、空っぽの部屋から倉庫まで、全裸で雪のヘルシンキを駆け抜ける。こうして始まった365日の“実験”生活。毎日、倉庫からモノを1つ選ぶたびに、「自分にとって今、必要なモノは何か?」を考える。そんな中で、モノに反抗したくなったり、逆にモノが恋しくなったり、気持ちは日々変化していく。
「必要が満たされた時に、人はモノに何を求めるのか?」
「モノを買わないと決めたのに、直すより買った方が安い。どうしたらいい?」
「何のために、自分はたくさんのモノを持っていたのか?」
といった無数の問いと葛藤が、ペトリを襲う。
優しい相談相手であるおばあちゃん、兄を心配して食料を差し入れてくれる弟、文句を言いながらもモノの出し入れや修理を手伝ってくれる友人たち、新しく出会ったアウトドア好きなガールフレンドなど、様々な人々との関わりの中で、「自分を幸せにする、人生で大切なものは何か?」の答えを、ペトリは見出していく。
1984年生まれ。
17歳からTVCMやミュージック・ビデオを作り始める。
フィンランドの国営放送Yle放映の3本のドキュメンタリー・シリーズに、
ディレクター・撮影監督・編集として携わっている。本作で長編映画デビュー。
名門シベリウス・アカデミー出身、ソウルフルな新世代サックス・プレイヤーとして、北欧No.1 の人気と実力を誇るミュージシャン。20 06 年に初来日公演を行なったThe Five Corners Quintet のフロントを務め、バンドでもソロでも日本デビューを果たしている。その後もイタリアのレーベル・Schema から“ Live with Lassy”などを発表、Timo Lassy Band としても活動の幅を広げている。近年はアートの新しい形としてのジャズを知らしめるために、We Jazz を設立し、ヘルシンキで1週間にわたるジャズ・フェスティバルを主催。 ★世界初!フィンランドでも発売していないサントラを、iTuneにて配信中!→ https://itun.es/jp/VMuY1
Making Scene